Author Archives: hidakasemi

2016年度 第7回ゼミ(2016.6.4)

研究状況報告(発表者:IKさん)

「経営者(CEO)による情報セキュリティ投資における意思決定に関する分析」を仮テーマとして、研究概要について発表した。また関連する先行研究として「Making fast strategic decisions in high-velocity environments」を紹介した。本論文では以下の5つの提言がなされている

  1. The greater the use of real-time information, the greater the speed of the strategic decision process.
  2. The greater the number of alternatives considered simultaneously, the greater the speed of the strategic decision process.
  3. The greater the use of experienced counselors, the greater the speed of the strategic decision process.
  4. The greater the use of active conflict resolution, the greater the speed of the strategic decision process.
  5. The greater the integration among decisions, the greater the speed of the strategic decision process.
研究状況報告(発表者:KGさん)
『日本におけるマーケティングがもたらす価値についての考察』と題して、前回に引き続くテーマでマーケティングそのものの概念への理解を掘り下げ、問題意識をより具体化しようと試みたが、研究論文として成り立つようなテーマに至ることが出来ず、多くの課題を残すこととなった。今年、新たに入学された新ゼミ生も初参加され、新鮮な意見も伺うことができた。

2016年度 第6回ゼミ(2016.5.28)

研究状況報告(発表者:IKさん)

前回発表より継続して問題意識の深堀を実施中。「経営者による事業投資における意思決定に関する分析」を仮テーマとする。関連する先行研究論文については次回ゼミで発表する。

研究状況報告(発表者:MTさん)

サブスクリプションコマース(以下SC)で提供されているキュレーション等のサービスは、顧客の購買・利用行動を変える働きがあると考えられる。そこで、SC事例から様々なSCサービスを抽出し、それらに対する顧客の評価と購買行動類型の関係をアンケートで調べることを検討した。

2016年度 第2回サービス科学研究会A(2016.5.14)

講演
講師:京都大学 経営管理大学院 山内裕准教授
テーマ:「闘争」としてのサービス:顧客インタラクションの研究
研究分野
サービスデザインが主な研究分野である。サービスの幻想をひも解くことをテーマに、顧客便益、価値共創だけではなく、「サービスとは闘いである。」という独自の観点から、サービスの本質とは何かを研究している。
研究背景
サービスにはおもてなし、居心地の良い環境、顧客ニーズを満たすことなどが大切であると考えられているが、実際の接客現場では闘争(struggle)が本質的には起きているのではないか。
実験
複数のある飲食サービス店において、店側と顧客のサービスエンカウンターで、実際に起こっているインタラクション(やり取り)の映像を分析する。
<主な分析方法>
・エスノメソドロジー(社会の秩序を解明する社会学)
・会話分析
結論
顧客を満足させようとすると、顧客は満足しなくなる?
続きは関連著書でどうぞ。
関連著書
「闘争」としてのサービス 顧客インタラクションの研究

  • 著者/山内 裕
  • 発行所/中央経済社
  • 価格/2600円(税抜)
  • 2016年度 第5回ゼミ(2016.5.7)

    研究状況報告(発表者:IKさん)

    前回発表の「ID基盤統合によるガバナンス強化の有効性検証」から「ガバナンス」の定義について深堀を実施。
    「ガバナンス=企業内部の透明性」とし、企業内部の透明性を高めることにより意思決定に必要となる情報を迅速に収集できるのではないかという出発点から先行研究調査を実施していることを発表。「ガバナンス」「意思決定」についての抽象性について再度指摘をうけた。

    研究状況報告(発表者:AYさん)

    ソフトウェア産業の各セグメントにおける開発手法に関する比較研究」
    前回(2月)までは、問題を提起する前の段階の現状認識が、自分の経験のみに基づいておりエビデンスに基づいた議論をしていなかった。その現状を踏まえて、この日は日本の情報サービス産業および情報処理技術者に関する各種の統計情報を収集し、それに基づいて研究で取り上げたいと考える業界の現状について報告した。特に、日本では多くのソフトウェアビジネスが受託開発ソフトウェア業によって担われており、技術者も多くがそのような企業に属していることや、いわゆるWeb系企業のほうがその他のソフトウェア業よりも高収益を上げていること、そしてWeb系企業のほうが圧倒的に社員に占めるエンジニアの割合が小さいことなどを報告した。
    この日は6月からの研究室配属を前に多くの4月入学生が見学に訪れていたこともあり、非常に多くの意見をいただいた。特に先生から指摘されたのは、自分の立場がはっきりしておらず、どういう立場から、世の中がどうなることが望ましいと考えているのか、そこがはっきりしないと、調査が難しくなるのではないかという指摘を得たほか、数人の外部の専門家を挙げられ、会話してみることを勧められた。

    2016年度 第4回ゼミ(2016.4.30)

    研究状況報告(発表者:KG)
    日本におけるデマンドジェネレーションがもたらす価値についての考察』と題して発表を行った。
    日本はマーケティング後進国であるという問題意識から派生して、デジタル化社会の中でマーケティング活動が企業に価値をもたらす可能性を探るため、「マーケティングオートメーション」「ペルソナマーケティング」「カスタマージャーニー」などのキーワードからこれまで書籍やインターネットなどで調査した内容について話をした。
    残念ながら研究対象としての問題意識の不明確さや読んでいる本がビジネス寄りになっている等様々なご指摘を受け、本質をついた内容になっていないため、再考することとなった。日高先生、ゼミメンバーに加え、聴講者の方からも貴重なご意見を伺い、洞察を得た。

    2016年度 第3回ゼミ(2016.4.16)

    研究状況報告(発表者:ET)

    「エンタープライズストレージハードウェア市場における、技術トレンドの変移に関する考察(仮)」
    GoogleやFacebook等の大規模データセンターを持つクラウドサービス事業者は、サーバーやストレージの市場において大量購入顧客である。また、Open Compute Projectのように、大規模データセンターを持つクラウドサービス事業者は近年、技術の提案や標準化を積極的に推進している。これらより、大規模データセンターを持つクラウドサービス事業者は、買い手として強い交渉力・技術力を持ち、サーバー・ストレージ市場において技術的なトレンドを作り出しているのではないかと考え、研究テーマとして発表した。
    この研究が誰にとって、どういう価値があるのか、「技術的なトレンド」とは誰がどこに影響を与えているのか等、議論の基本を明確にするように指摘を受けた。

    2016年度 第1回サービス科学研究会B(2016.4.23)

    講演
    講師:首都大学東京大学院 システムデザイン研究科 木見田 助教授
    テーマ:「高等教育を対象とした提供者のコンピテンシーと受給者のリテラシーの向上による共創的価値の実現方法の開発」

    • プロジェクト概要
      平成25年度採択の問題解決型サービス科学研究開発プログラムの1つで、教師側のコンピテンシーと学習者側のリテラシーの双方を高めることで、目標とする学習成果を達成するサービスの実現方法を研究する。プロジェクトは終盤で、残り半年でまとめあげる必要がある。
    • 研究概要
      高等教育でのサービスの価値共創は「提供者が持つ知識と方略」、「受給者が持つ知識と方略」とが互いに交錯し合って発生し、学習成果や満足度などの価値を形成する。その形成には提供者のコンピテンシー(教師が潜在的に持つ、優れた成果の原因となる特性や能力)と学習者のリテラシー(学習者の持つ効率的、効果的に学習する能力)が重要な要因となる。その2つの特性はメタ認知というプロセスがキーとなり、メタ認知を促進することで向上すると考えられる。
      ★合意形成プロセス

      1. 学習者自身のメタ認知を促す。
      2. 学習者が自身の教師をメタ認知し、コンピテンシーを調整する。
      3. 教師が自身と学習者をメタ認知し、コンピテンシーを調節する。

      ★ツール開発
      学習状態マップ、学習状態マトリクスを開発し、教師と学習者のメタ認知の促進に活用した。

    • 教育現場への適用
      M-skpye Project:大学におけるTOEFLの学習者を対象に実践研究を行った。

    2016年度 第2回ゼミ(2016.4.9)

    研究状況報告(発表者:TA)

    プロボノ活動参加におけるシニア知的労働者の適応力向上に関する研究と題して発表を行った。
    近年、早期退職者を募る企業が増加している。さらに定年前の人口最大占有世代はバブル世代の45〜60歳の人達となる。また、年金受給年齢は引き延ばされる可能性があり、社内に居座るシニア人材の増加が予想される。
    しかしながら、彼ら自身は過去の経験に固執してしまっているなど適応力の欠如が指摘されている。そこでプロボノという自分のスキルを活かしたボランテイア活動をすることによって、意識やスキルの変化が起きると仮定し、アンケート調査を実施するアプローチであることを発表した。
    評価対象をだれにするのか、分析方法としてAHPは妥当なのか、個人のバリューはどう図るか、データとして十分なnが取れるかなどが主な議論の対象となった。
    引き続き、検討することとする。

    2016年度 第1回ゼミ(2016.4.2)

    心理統計のためのアンケート用紙の設計について(発表者:HK)
    研究調査において、顧客などの心理を測定し分析する必要がある場合にどのようにアンケート用紙を作成すればよいのかを自分の研究を例として紹介した。
    ☆概略☆

  • 定量調査: 人数や割合、傾向値などの数値や量で表される量的データで集計・分析する調査方法。
  • 定性調査: 個人の発言や行動など、数量や割合で表現できない「質的データ」を得て、解釈する調査方法。
  • 4種類の尺度
    • 名義尺度(nominal scale): 職業、性別
    • 順序尺度(ordinal scale): 順位、硬度
    • 間隔尺度(interval scale): 温度
    • 比率尺度(ratio scale): 長さ、質量
  • 質問紙作成のプロセス
    1. 目的の確認: 必要な情報の整理
    2. 質問項目の選定、整理: 必要情報と質問項目の整理
    3. 質問文の作成: ワーディング、質問順序の確認
    4. 回答方式、形式の決定: 情報の活かし方の確認
    5. 質問紙のブラッシュアップ: 質問、回答と必要情報の再確認、質問量の確認
  • 参考図書:「アンケート調査入門」朝野照彦(東京図書)

    2015年度 春季ゼミ(2016.3.5)

    本年度の締めくくりとして、大岡山で春季ゼミを開催しました。今回は他研究室からMさんも参加され、指定図書(オープン・サービス・イノベーション)の読み合わせにより、サービスサイエンスをより深く理解することができました。
    日時: 3月5日(土) 10:00 – 18:00
    会場: 東京工業大学 西9号館 演習室
    指定図書: オープン・サービス・イノベーション-生活者視点から、成長と競争力のあるビジネスを創造する-ヘンリー・チェスブロウ(著)
    タイムテーブル:
    10:00~10:30  序-1章 Aさん発表
    10:30~11:30  2章 Kさん発表
    11:30~12:30  3章 Eさん発表
    – 昼食 –
    13:30~14:30  4章 Iさん発表
    14:30~15:30  5章 Mさん発表
    – 休憩 –
    16:00~16:45  6-7章 Kさん発表
    16:45~17:30  8-9章 Tさん発表
    17:30~18:00  10章 Aさん発表
    以下、発表者のサマリーです。
    序 章 オープン・サービスとイノベーション
    第1章 オープン・サービス・イノベーションの必要性
    IBMの基礎研究部門を率いるポール・ホーンはIBMにおける研究活動についてこう述べている「収益の大半を占めるサービス関連の研究でなければ、研究活動は今後、つづけていけない」。
    IBMがコンピューターやソフトウェアの製造からビジネスコンサルティングサービスへシフトしていることを受けての発言である。知識が世界に行き渡り、新興国がグローバル市場で勃興し、先進国が経済的に頭打ちになっていることを背景に、世界の製造業は「コモディティ・トラップ」に陥っている。
    コモディティとは製品の価値ではなく費用ベースで売られる製品のことで、つまり低収益で企業に利潤をもたらさない製品である。あらゆる製品がコモディティ化圧力にさらされることにより、先進国の経済は大きな脅威にさらされている。これが製造業がサービス業にシフトすべき要因である。冒頭の発言はそのような経済状況を念頭に置いて行われたものである。
    しかし、そこに問題がある。新製品やテクノロジーの開発と異なり、サービスにおけるイノベーションがどのように行われるかについてはあまり知られていない。本書はそこを解き明かすことを目的にしている。
    サービス・イノベーションにおけるポイントは4つあると著者は述べている。
    ・サービスを、成長し続けるためのビジネスとして捉える
    ・顧客と共同してイノベーションを創出する
    ・自社のビジネスを取り巻く第三者の専門家がオープン・イノベーションを加速する
    ・サービスイノベーションのための新しいビジネスモデル
    本書は2部構成となっており、第2章から第5章は上の4つのポイントを順に説き明かす。第6章から第9章はサービスイノベーションの事例について紹介し、第10章で全体を統括する。
    第2章 ビジネスをサービスとして考える
    サービス活動と異なり、製造活動では製品が売られると提供者の仕事は完了し、製品を使って理想的な結果に到達する責任は利用者にある。一方、サービス活動では顧客のニーズが満たされるまで仕事は終わらず、顧客と長い関係性を築く、顧客生涯価値(Life Time Value)が重要となる。従来のバリューチェーンでの製品中心の考え方ではなく、サービス志向の経済に合わせて見直していこうという流れになってきている。
    第3章 顧客との共創
    製品ビジネスにおいて、製品は個体間で共通のスペックに準じ、同質性を持つ。サービスは、製品ビジネスとは異なり、サービスが提供される状況や顧客ごとのニーズによって質や内容が異なる。
    逆に言えば、サービスは、顧客ごとのニーズに応じて質や内容を変えることが可能であり、このような操作によって顧客の満足度を向上できる。顧客行動の観察によって、顧客自身が認識していない顧客ニーズが掴め、サービスの向上に役立つ。
    また、顧客の積極的な参加によって、サービスの質や内容は向上し、結果として顧客の満足度も向上する。
    第4章 社外にサービス・イノベーションを広げる
    第5章 サービスでビジネスモデルを変換する
    企業が新たなビジネスモデルを創出(innovating)することの重要性とその難しさ(difficulty)を吟味(examine)する。また、新たなサービスビジネスモデルを創出可能な組織のあり方や、自社ビジネスに直接、あるいはその周辺に対して投資を行う第三者を惹きつけるサービスプラットフォームの養成に関する知見を導き出す。
    < サービスイノベーションのためのビジネスモデル構築のポイント>

    • (カスタマーにとっての)固定資産の一括購入費用を、長期にわたる低額のランニングコストに変換する。そのためにサプライヤーが固定資産に投資→様々な方法で回収可能。
    • ターゲットとなるカスタマーを再検討する。医療ビジネス→医師or患者?
    • バリューチェーンを再設計する。販売以外の利益体系(保守メンテ)
    • 請求方法の変更。換価価値ではなく、トータルソリューションを提供。
    • より大きなエコシステムへの接続(オープン/クローズド、ダイナミックケイパビリティの議論)。

    < ビジネスのドミナントロジック>

    • 自社ビジネスの「ヒューリスティクス」(慣性)の方向に適合した、強みを活かすビジネスを志向することが重要。ゼロックスの事業ベクトル:法人・大規模主体、デル:BTO主体
    • 一方で慣性志向を強めすぎた場合、組織の特殊化→硬直化を招き、新ビジネスへの展開や軌道修正が困難となる可能性も。

    < ビジネスモデルを変換するツール>

    • オスターワルダーによるマッピングアプローチ:代替案の構想/他者モデルとの比較に有用
    • IBMのコンポーネント・ビジネスモデル:内在するプロセスの明確化、活動実態と組織の整合性の確認と改善
    • アクション・バイアス:市場への行動実践→フィードバックからその有効性を検討(ベンチャー的)

    ※変化を先導する企業内リーダーシップが要求される
    <サービスビジネスモデル実現のための組織再編>

      1. 規模と範囲の経済性を得るための企業のセットアップ
        最適化とカスタマイズの両立:フロントエンドとバックエンドの分離と役割明確化
      2. ビジネスモデルに合ったプラットフォームの育成
        自社ビジネスのオープン化の推進:「コモディティ」から「プラットフォームビジネス」への昇華
      3. プラットフォーム構築のためのオープン化の推進
        サプライヤー・カスタマーとの接続拡張:エコシステム構築によるビジネスモデルの統合

    第6章 大企業のオープン・サービス・イノベーション
    第7章 中小企業のオープン・サービス・イノベーション
    第8章 サービス・ビジネスのオープン・サービス・イノベーション
    第9章 新興経済国でのオープン・サービス・イノベーション
    第10章 オープン・サービス・イノベーションの今後
    イノベーションの歴史を振り返ると、かつては農業、ついで製造業でイノベーションがおき、生産性が大きく向上した。次はサービスの生産性を向上させなければならない。しかし、ここで問題が生じる。サービスという無形で直接測ることができないものののイノベーションは現実に可能なのかということである。
    この状況での提言は、サービスイノベーションが大学で研究されなければならないということである。企業は短期的なプロジェクトに注力しているので、長期的な革新は大学が担うべきである。ただ、実際はそうはなっていない。ビジネスや経済の考え方がモノ中心(グッズドミナントロジック)になっているばかりでなく、研究者が保守的で変化を望んでいない現状がある。われわれには学際的なアプローチが求められている。
    また、現在のサービスは縦割りで考えられているせいでイノベーションが生まれない。サービスイノベーションには複雑に組み合わされた知識が関与している。それぞれの知識を組み合わせて一貫したシステムをどう作るかが重要である。サービス中心のビジネスでは、製品中心のビジネスと違って、統合をサービス提供側が引き受けることで顧客に恩恵を与えられる。統合によって社会の生産性を上げることができるはずである。
    これらのオープン・サービス・イノベーションの取り組みによって企業はコモディティ・トラップを克服して成長し続けることができるのである。