2017年度 第17回ゼミ(2017.10.3)

研究状況報告(発表者:上田さん)

興味を持っている学術分野を、サービス科学の中のサービス・マーケティングとしてとらえ、Service, Quality, Costをキーワードとして文献・論文を探索し、Parasuraman, Berry, ZeithamlのGap Model、Zone of Tolerance、SERVQUAL、JohnstonのDelight & Dissatisfactionとサービス品質の18要因を紹介するとともに、Customer Experienceの事例を加えて顧客とのTouch Pointをベースにサービス品質を分類した上で、サービスのHygiene Factor(衛生要因)について考察した。
Hygiene Factorは、良くて当たり前のサービスで、不足すると不満を感じさせるサービス品質要因であり、あれば顧客を満足させるが、なくても大きな不満要素にはならないEnhance Factorとは性質が異なっている。サービス研究はEnhance Factorに関するものがほとんどで、Hygiene Factorとコストに関する研究は少ないが、交通、エネルギー、通信などのインフラ業界ではHygiene Factorを満たすために過剰なコストが投じられている可能性があり、エアラインを事例にこれを検証してみたいと考えている。5Gによる自動運転などが始まると通信インフラのHygiene Factorはより高まる一方で、コスト管理も重要性を増してくることが考えられ、多方面での応用が可能である。ただし、衛生要因という表現には違和感があり、Critical Servicesという表現を使ってみようと思っている。
サービス品質として上述のParasuramanらの方法以外に、狩野モデルがあることを提示いただいた。サービス品質は顧客満足とサービスとの比較で、目に見えづらく、仮説を立てて推論を立証することが必要であり、Gap Modelなどを安易に利用するのではなく、自ら論理展開することがMOTでは大切なことであるとご教授いただいた。また、サービスを比較選択する上では、AHP(Analytic Hierarchy Process; 階層分析法)が有用であること、Customer Experienceのひな型としてCustomer Journey Mapがあること、サービスを考える上ではContext(航空であればビジネスクラスとエコノミークラスの顧客の期待品質の違いなど)も重要な視点であることなど、多くの示唆をいただいた。
参考文献
Berry, Leonard L., A. Parasuraman, and Valarie A. Zeithaml. 1990. “Delivering Quality Service: Balancing Customer Perceptions and Expectations.” The Free Press
Berry, Leonard L. and A. Parasuraman. 1992. “Marketing Services: Competing Through Quality.” The Free Press
Johnston, Robert, Graham Clark, and Michael Shulver. 2012. “Service Operations Management.” 4th ed. Pearson.
近藤隆雄 2012 「サービスイノベーションの方法と理論」 生産性出版

研究状況報告(発表者:仲里さん)
オフィスにおける紙出力の選好と紙出力行動の関係を調査するという内容で発表した。以下の点について考慮が必要であることをメンバーから指摘いただいた。
・仕事量の増加分を考慮した紙出力量の正規化
・組織内での文化・習慣の影響
・IT化が進んでいる企業内での調査が望ましいのではないか。
・部門間での違いや、一人の作業の時間軸(時系列)での分析もありうる。
また、日高教授からは、かなり詳細な調査画必要になるが、東工大を対象にした調査もレポートとしてはありうるとのコメントをいただいた。次回までに方法論を検討する。