2017年度 第28回ゼミ(2018.1.6)

研究状況報告(発表者:上田さん)

「サービス品質のHygiene Factorと顧客志向に関する考察」
前回(11/28)の発表時にご指摘いただいたサービスの顧客による動的側面を考慮して、当たり前サービスのサービスとコストの基準(ALARP領域, As Low As Reasonably Practical)を顧客層に応じて変化させるコンセプトを紹介した。
また、インフラ産業の例として挙げている通信企業における顧客志向の変化、コア事業でのコスト削減の現状を整理し、当たり前品質が重要視されるインフラ産業においても競争環境が強まることで、それまで当たり前のごとく費用を投じていたコア事業のコスト削減が必要になることを示した。
いただいたご意見
エネルギーインフラと交通インフラ(特に航空)の当たり前サービス品質は異なるのではないか
エネルギーは継続的(Continuous Services)、交通は個別的(Discrete Services)なサービス提供が主であり、顧客がサービスを当たり前と知覚する程度に違いがある銀行や保険、病院などもインフラと言える
これまでは企業側が当たり前品質を定義してきたが、顧客志向が高まることによって変化があったのかインフラ産業の定義を明確にしたうえで、自由化の変遷とサービス品質が変化する状況を整理すべきである
今後に向けて
Continuous ServiceとDiscrete Serviceによるサービス知覚の違いは有用なご意見だった。あらためてインフラ産業を定義づけし、当たり前品質知覚の違いによる分類に加え、企業内部で当たり前品質維持を担う部門を明示して、当たり前品質とコストのトレードオフの議論を進める。

研究状況報告(発表者:角田さん)
研究目的の設定に関して大まかなテーマを元に個人的関心・社会の関心・学会の関心の観点で調査した内容を発表した。
指摘として先行研究に関しては国内企業の経緯に関する分析などの観点を絞った上での調査の必要性や目的の設定の上で各観点のバランスだけでなく社会にとって意義のある点、面白い問題は何なのかを設定する必要性に関してアドバイスを頂いた。
また収集中のデータからはそのデータが目的と合致しているのか再度分析する必要性をご指摘いただいた。今後指摘頂いた内容を踏まえ、調査の上で問題とするべき点の設定及び対象データの調査を継続して行う。
研究状況報告(発表者:江尻さん)

中小企業のIoT化における生産性向上に効果的なデータ活用について、発表を行った。
今日、安価なセンサやボードコンピュータの普及により、企業が数万円~数万円程度で自社の製造現場をIoT化する事象が起きており、このような中小企業のIoT化を表す言葉として「身の丈IoT」という言葉が生まれている。
ヒトモノカネが豊富な大企業が自社のIoT化をする場合、あらかじめ企業内の課題抽出を行い、計画的にIoT化を進めていくが、ヒトモノカネが十分でない企業の場合は、最低限の課題に焦点を絞ってIoT化を行い、その後は新たな課題を見つけ次第、その課題解決のためにシステム拡張を行っていくのではないかと推測している。
中小企業が初期のIoT化後に、新たな課題を見つけては対応していくのであるとしたら、その契機は何なのか、というのが本研究のクエスチョンである。
入手した中小企業IoT化事例の文献からは、企業がどのようなスタンスでIoT化を進めたのかは判断できず、その点について指摘を頂いた。
また、既存の、センサとICTによるデータ取得・活用と、今回のIoTは何が違うのかという点、研究対象を中小企業という大きな括りではなくて業種を絞るべきではとの指摘を頂いた。
これらは今後の課題として、検討していく。